2017年4月24日月曜日

WACCを計算してみる。

 株価って何で決まるんでしょうね?将来への成長への期待が株価を形成するって言われてもピンときません。結局、将来にわたって配当をもらい続けることが出来る権利こそが、株を持つことの意味だと思っています。世の中には、理論株価の計算方法が色々ありますが、今回は、この配当に焦点を当てた方法について、考えてみます。

P=Di/R

P:理論株価
Di:配当
R:期待収益率

Rには、WACC(加重平均資本コスト)を用います。

WACC= D/(D+E)×rd×(1-T)+E/(D+E)×re

D:有利子負債価値
E:株主価値
rd:有利子負債コスト
re:株主資本コスト
T:実効税率

え?この式の意味ですか。。。

Don't think, feel!

とは言え、こんな式を並べられても、使い方がわかんないと意味がないです。
トヨタ自動車の2017年第3四半期決算短信を用いて計算例を示します。

決算短信はここ↓からダウンロードしてください。
http://www.toyota.co.jp/jpn/investors/financial_results/

四半期連結貸借対照表を見ます。以下単位(百万円)です。

短期借入金:5,364,889
一年内返却予定の長期借入債務:4,200,035
長期債務:9,881,275

有利子負債価値Dは、上記の和です。
D=5,364,889+4,200,035+9,881,275=19,446,199

続いて、有利子負債コストrdも計算しちゃいましょう。
今度は、四半期連結損益計算書を見て、
支払利息:19,588
有利子負債コスト(rd)=支払利息/有利子負債×100=19588/19446199×100=0.10(%)

株主資本コストreについてですが、これまた、ややこしい。

rf:リスクフリーレート
β:個別企業の不確実性
rm-rf:株式リスクプレミアム

として、株主資本コストreは
re=rf+β×(rm-rf)

リスクフリーレートrfには、日本国債金利(10年)適用して、
rf=0.016(%)

 βは市場全体の株価の変動に対して、その個別の企業の株価の変動割合です。
msnマネーで企業株価を調べると出てきます。
β=1.12

株式リスクプレミアムは、リスク資産である株式には、安全資産で運用した場合に比べ、より高い利回りが期待されますが、その差を表しています。
具体的には、過去の国債利回りとTOPIXの利回り(値上がり分+配当)の平均値の差を用いたりもしますが、ここでは5%を用います。
 rm-rf=5(%)

 株主資本コストre=0.016+1.12×5=5.616%

 株主価値Eは、株式の時価総額(株価×発行済み株式数)で、これはYahoo ファイナンスを参照してください。
株主価値E=19,104,850

実効税率Tは、30%を適用しましょう。実効税率は法人税、外形標準課税もろもろを含んで、利益に対して全部でいくら税金がかかるかって奴ですね。昔は40%だったのですが、アベノミクスですね。。。
T=30(%)

さあ、これでWACCが計算できます。
WACC= D/(D+E)×rd×(1-T)+E/(D+E)×re
= 19,446,199/(19,446,199+19,104,850)×0.10×(1-30/100)+19,104,850/(19,446,199+19,104,850)×5.616
=2.82(%)

 これに対して、昨年のトヨタの配当Diは210円。
理論株価P=210/2.82×100=7450円

現在のトヨタの株価は、5855円だから、あれあれ?めっちゃ割安。
配当水準から見るとお買い得ですね。これは。

しっかし、WACC算出を今回は追いかけてみましたが、思うことが色々。。。

 このご時世にあって、大企業は実効税率が引き下げという優遇を受けて、その上、金利もこれ以上ないほど引き下げられているので資金調達も容易です。しかも、世界一勤勉な日本人を安い給料で雇用できるという好条件にも恵まれています。それなのに、なぜ日本だけが低成長にあえいでいるのでしょう?

 経団連の皆々様には、これまで成長を実現することも、そのビジョンを示すことも出来なかった責任を取って、その場で切腹してもらいましょう。
その上で、企業は労働者と株主に成長の対価をもっと積極的に還元していくべきと思いました。

あ、トヨタ自動車は、よくやっていると思いますよ。

2017年4月15日土曜日

リスクオフ!そして海の向こうで戦争が始まる。


 なんでか、世界のどこかで危機が生じると円高になる昨今、半島情勢がきな臭くなってきて、日本にも飛び火しかねない状況。普通は円売りでしょっ?と思うのですが、、、
今回は日本と世界の危機が発生した時の為替の変動を振り返ります。

2016年6月23日 ブレグジットショック(イギリスEU離脱の国民投票)
始値110.703 高値110.83 安値98.907 終値103.24

2016年4月14日 熊本地震
始値112.551 高値 112.582 安値 106.266 終値 106.379

2015年11月13日 パリ同時多発テロ事件
始値120.365 高値 123.719 安値 120.26 終値 123.088

2015年8月11日 チャイナショック
始値123.912 高値 125.281 安値 116.174 終値 121.236

2014年2月23日 クリミア危機
始値102.005 高値 102.839 安値100.738 終値101.865

2012年9月11日 尖閣諸島国有化-中国で反日暴動
始値78.316 高値 79.223 安値 77.115 終値 77.97

2012年8月10日 韓国大統領:李明博が竹島へ不法上陸
始値78.126 高値 79.655 安値 77.916 終値 78.316

2011年3月11日 東日本大震災
始値81.767 高値 83.296 安値 76.966 終値 83.146

2010年9月7日 尖閣諸島中国漁船衝突事件
始値84.192 高値 85.932 安値 82.875 終値 83.488

 事件の発生日と、その月のドル円為替月足をピックアップしてみました。

 こうして見ると、安全保障に関わる事件も、為替に影響しないんですね。極東の小競り合いという事もあるのでしょうけど。ま、経済に直接影響しないのだから、そりゃそうですか。

 とすると、直近で円高に振れた発端は、トランプ大統領の口先介入と日米金利差の低下が原因。
仮に朝鮮半島有事が現実になっても、それだけでは、為替にとってはニュートラルと見て良いでしょう。アンテナは張っておくべきですが、まずはドル買いのチャンスを冷静に見極めますよ。
キャッシュの備蓄は十分か!

2017年4月9日日曜日

経済の先行きについて

 株価は将来の成長に対する期待だって言いますよね。そしてどんな企業も景気の良し悪しに業績は左右されます。どうせ買うなら株も割安の方が良いので、景気が今どっちに向かおうとしているのかを知ることが出来れば、有利に株を購入出来るはずです。

 そんな便利な指標、OECD景気先行指数(Composite Leading Indicator)を、ここでは紹介します。OECD景気先行指数は、景気の転換点を見極めるための指標で、OECD加盟国と、それに加えて中国、インド、ブラジル、ロシア等、主要国を対象に、各国の経済指標を基に作成されております。そしてOECD景気先行指数はGDPに対して、6から9月程度先行するように設計されています。

OECD景気先行指数(以下CLI)は、OECDのHPにて、毎月10日前後に発表されます。
リンク先はこちら↓
http://www.oecd.org/std/leading-indicators/

CLIの値の見方ですが、100を基準として、100より大きければ、景気上昇局面、100より小さければ景気下降局面と見ます。更に、景気循環と悪化の二つに分けるだけではもったいないので、景気循環の4局面(不況⇒回復⇒好況⇒後退)に分けるには、前の月のCLIとの差をΔCLIとして、
不況回復好況後退
CLI<100CLI<100CLI≧100CLI≧100
ΔCLI<0ΔCLI>0ΔCLI>0ΔCLI<0

 と、分類できます。


ΔCLIが0の時は、景気の谷、踊り場、山、停滞と見れば良いでしょう。

さてさて、実際CLIの動きは株価と相関が出ているのでしょうか?見てみましょう。



 CLIの動きと、株価の動きに、かなりの相関がありますね。ここで大事なのは、CLIの山や谷が現れるのが、株価の山や谷の出現する時期と、ほぼ一致、もしくはわずかに早いという事です。
といっても、残念ながら、その月に発表されるのは2か月前の指標、(2017年3月7日に発表されているのは、2017年1月のCLIです。)

 とは言え、今起きている株価の上下が、景気局面に沿った動きなのかどうかを知るのは、判断材料として大変重要ですね。ましては、この不確実な時代ですし、目の前の株価だけでなく、もっと高い視点から俯瞰しないと、波に流されてしまいます。


2017年4月2日日曜日

為替について

 日本で生活している以上は、為替レートの変動に投資のリターンは左右されます。円高ならドルを買って、円安なら日本株を買うと。まあ、そんなことが出来れば苦労はない訳ですが、今の相場がどっちに行こうとしているのかを見立てる相場観が大事なのは当然です。
 一般的にドル円相場は、日米の長期金利の差と相関があると言われます。1997年からの推移を見てみましょう。
 なるほど、なるほど。確かに相関がありますね。
でも2012年からのアベノミクスで、金利差とドル円の水準に乖離が生じています。



1997年からの日米金利差とドル円の為替の関係です。
そこから算出した近似式は、10.126×金利差(%)+81.373=円/ドル となります。

2017年3月31日時点のそれぞれの利回りは、、、
・米国債10年利回り:2.389%
・日本国債10年利回り: 0.071%
金利差2.318%で、近似式に入れると、104.845円/ドル 

金利差から見ると、105円程度が妥当な水準だけど、現在の為替は111.38円/ドル。

・アベノミクス、黒田バズーカで円安に持ってきたが、2016年後半には効果が一旦収束。
・2016年末からはトランプ相場が開始、米国の金利が上がっていくとはいえ、
 ちょっと期待が先行し過ぎ?

ドルを買うのは、もっと待った方がいいですね。