巷で出回る経済学入門本を見ていても、学問という割には、抽象的な文章ばかりで、数式の類が目につきません。結果的には、そういった書籍ばかり選んでいたからって事なんですが、経済政策を考えることが出来るのは、その効果予測が出来るから。なけなしの予算を効率よく配分するには、どうすれば良いのか、何らかの理論があるはずです。世の中数字で表せるものだけではない、その通りなのでしょうけど、経済の根底にある理論を知らなければ、感傷的な意見に振り回されるだけで、客観的に良い、悪いの判断が出来ません。有権者たるもの、ワイドショーやバラエティ番組を見て、知った風な気になってしまうのは、恥ずかしい事です。面倒くさいですが、将来世帯の事を考えれば、少しはお勉強をしなくてはなりません。自分で勉強したら、知った風な口を聞いても、少しは恥ずかしくないです。それに投資家的にも、テクニカル分析より、ファンダメンタル分析が出来た方が、なんだかカッコいいです。難しいことをやっている感があります。という訳で、アベノミクスのブレーン高橋洋一著『日銀新政策の政策は数式で全部わかる! 白黒はっきりつけよう!』をテキストに、アベノミクスの理論をお勉強していきたいと思います。
公式① マネーの量とインフレの関係
アベノミクス第一の矢は金融緩和、市中に流れるお金をとにかく増やすことです。モノやサービスに対して、お金が増えたら、相対的には、お金の価値が下がります。すなわち物価が上がります(インフレ)って話は、直感的に分かります。じゃあ、どんな関係があるかというと、、、
t時点の予想インフレ率は、1期前のマネーの伸び率に比例する。
ポイントは、予想インフレ率とマネーの伸び率には、1期(半年)の時間差があるという所でしょうか。
公式② 為替レートと実質金利の関係
将来インフレが進むと予想されると、名目金利との差、実質金利が下がります。とすると金利が付かない通貨より、金利の高い通貨を持っておこうというのが自然な流れ。為替レートとの関係は、、、
t時点の為替レートは、実質金利と反比例の関係にある。
こちらは、タイムラグなしで織り込まれます。
と言っても、金利が高くても、信用されていない通貨は買い手がつかないので、だから高金利、なんてこともあります。この辺は、それなりの国の通貨にだけ適用できる話なんでしょうね。
公式③ 資産価格と実質金利の関係
続いて、資産価格と実質金利の関係です。予想インフレ率が上がると、実質金利が下がって、土地価格や株価の資産価格が上がっていきます。これは借り入れがしやすくなって、投資しやすくなるから、これも自然な流れですね。
t時点の資産価格は、実質金利と反比例の関係にある。
こちらもタイムラグなしで織り込まれます。
公式④ 消費と資産価格の関係
続いて、消費と資産価格、所得の関係です。ここが問題ですね。不動産や株の価格が上がれば財布のひもが緩んで、ついついお金を使ってしまう。それに加えて、所得が増えてくれれば尚更、景気よくお金を使ってしまう。そんな関係にありますよね。そうすると、、、
t時点の消費は、所得と、1期前、2期前、3期前の資産価格によって決まる。
消費は、所得とタイムラグなしに影響されますが、資産価格は3期前の価格も影響を与えます。資産価格が上がり始めてから消費が増えるまでに1.5年、資産価格は直ぐではなくジワジワ効いてくるってことですね。
公式⑤ 輸出と為替レートの関係
輸出と為替レートの関係です。これは有名ですよね。円高になれば輸出が減って、円安になれば輸出が増えます。その関係がどう表せるかというと、、、
t時点の輸出は、1期前、2期前、3期前の為替レートによって、決まる。
輸出と為替レートの関係も、ジワジワと影響するということですね。
まあ、円安でお買い得だから、さあ輸入しようと思っても、
現実的にはものを生産するにはリードタイムが必要ですし、1.5年ぐらいかかるというのも納得です。
公式⑥ 設備投資と実質金利の関係
最後に、設備投資です。将来のインフレ予想が実質金利を引き下げるので、お金を借りるなら今がお得、そう人々が考えると、設備投資しちゃおう、家でも買っちゃおうという人が増えます。 その関係はというと、、、
t時点の設備投資は、1期前、2期前、3期前の実質金利によって決まる。
設備投資も、3期前からの金利でジワジワ効いてくると。設備投資も将来の予想を元に行うものだから、その場限りの低金利ではなく、持続的なものじゃないと、中々動いてこないんでしょうね。
まとめ
これまで、6つの式を並べてきました。高橋洋一チャンネルを見ていると、 時々先生が述べる経済を表す6つの公式って、これのことだったんですね。 世界標準の経済モデルを概略ではありますが、知ることが出来ました。
アベノミクス第一の矢、金融緩和の流れをまとめますと、
マネーを増加させることで、予想インフレ率を上げる。・・・公式①
↓
予想インフレ率を上げることで、実質金利が下がる。そうすると、、、
┣ →円安になって(公式②)、輸出が増える。・・・公式⑤
┣ →資産価格が上がって(公式③)、消費が増える。・・・公式④
┗ →設備投資が増える・・・公式⑥
となります。
GDPは、消費(C)と設備投資(IP)と政府支出(G)、輸出(EX)と輸入(IM)の差の和で表されます。
金融緩和は、消費と設備投資、輸出を引き上げて、経済成長を促すアプローチと言えます。GDPが増えれば、すなわち所得(Y)が増えたことになります。
どうでしょう?アベノミクス第一の矢、金融緩和は、あの立憲共産党ですら認めざるを得ないほどの成功を収めました。日経平均は3倍以上伸びました。マイナス成長は無くなりましたが、それでも0成長が継続しています。それは何故なのか、これらの式を見返すと、その原因がどこにあるのか、整理して考えることが出来る、そのスタートに立つことが出来ました。
経済の原理を、出来るだけ多くの人が共有すること。そうすれば、この長い停滞から抜け出すことが出来るはずです。これぐらいの簡単な数式なら、情緒的な文章よりも、すっきりしていて、かえって共有しやすいのではないでしょうか。
安倍さんは亡くなってしまいましたが、アベノミクスは世界標準の経済モデルなので、終わらせるわけにはいきません。岸田政権に代わって早10カ月。経済政策については、びっくりするほど、何もやっていません。その結果が何をもたらすのか、結果が出るのは、後1年ぐらいは先になるのでしょう。そのツケはジワジワ効いてきます。惑わされずに正しい判断が出来るようになっていきたいものです。
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